ブログ短編小説 KLで起きたマサオ暗殺事件の犯人を、思考だけで追え!

俺たちのマサオがやられた!

そんな悲報が飛んできた。

事件は2月13日、マレーシア クアラルンプール国際空港で起きた。

実行犯の供述によれば、テレビのドッキリとして手渡されたクリームを相手にぬる、という、実行犯に仕立てられた彼女らにとっては、冗談以外の何物でもない行為の中に、当局発表によるとVXガスという神経毒が使われ、それを目に塗り込まれたマサオは、あっけなく他界してしまった、ということだ。

魚屋の店長は、この話をバンコクで聞く。

「なんてこった。。。」

事件をネットで読んだ魚屋の店長は近くにあった新聞を持ち上げ、机に放り投げた。よくあるテレビのシーンを真似したかったのだ。

ショックを抑えようと2階に移動し、タバコに火をつけ、考える。・・・本当に北の仕業であれば、北にとって国際空港で彼を暗殺させることに、何の意味があるんだ・・・?

マスコミは、組織的、かつ、大胆不敵な北の犯行とほぼ断定し報道されているが、それは事実なのか。

魚屋の店長の空想は、以下のとおりである。

魚屋の店長がもしマサオの暗殺を考えるならば・・・

空港内部での犯行など1ミリも考えない。実行犯が捕まるうえ、監視カメラがあり、現地の軍、警察が在住するのが普通である国際空港内部で犯行に及ぶなど、リスクが高すぎるからである。

「本当に北の犯行だった場合、暗殺指示をするなら、空港から出てホテルまでいく、その間。空港でたら中国のボディーガードもいるかもしれんが、中国国内より容易に仕事はできるはずた。」

折れ曲がったタバコの灰を、漠然と見ながら、彼の頭の中は急回転する。

2月13日に実行犯が空港で待ち構えていた、ということは、マサオが2月13日にKL国際空港に来る、という情報を暗殺部隊にタレこんだ奴がいるはずだ。

そいつは、マサオの近くにいる側近で間違いない。マサオはチケットを買う時にネットで購入するのか?いや、移動が絶対に分からないように購入するのではないか。何月何日にKL空港へいくぞ!とか顔本(フェイスブック)などでいうはずがない。ごく親しい人間にしか言わないはずである。

仕事の実行はクアラルンプール。


という事は、情報を流したのはKLにいるマサオの知り合いという線が強い。

そもそもマサオは中国の監視下にある。そのマサオを中国国内で暗殺するとなると中国のメンツ丸つぶれだ。それこそ管理も厳重であろう。簡単には実行できないはずである。

KLにタレこむやつがいるのに、空港で実行する???

バレないようにするなら、タレこんだその人間を利用して、もっと秘密裏に実行できるはずだ。

しかも、この仕事の準備の仕方も稚拙である。報道によると、ショッピングセンターでドッキリの練習をしていたそうである。あくまでTVのドッキリを前提にしている。

これが事実であれば、VXガスを染み込ませたであろうクリームを本人に塗る、という手段は決まっていたのであろう。

しかし、なぜVXガスなのか。。。VXガスは化学兵器だ。これがバレるとまた国際問題になるうえ、仕事をする手段としては、猛毒の扱いが難しいはずである。他のやり方の方が楽なはずだ。

空港からでて、情報をタレこんだであろうKLにいる人間の近くで、秘密裏に拉致・監禁。今の時代、闇金ウシジマくんでも死体処理の方法など書いてある。死体の処理など、国家が本気になれば、どうにでもなるはずだ。

ただでさえ目立つ人間を、騙されたであろう可哀想な女性二人を使って、目立つ武器で、目立つ空港で目立つように暗殺しなければならない理由。。。

悪い国家が、純粋な女性をだまし、政敵である兄を殺すなど、心底、非人道的で悪者である。と、マスコミが飛びつきやすく、誰もがそれを理解しやすい簡単な構図を作り出した理由。そして北出身者の顔が簡単に割れる理由。

それは、過去マサオがしでかした失敗があり、その責任を取らせたのか、あるいは、これから起きる何かの為に彼を死に追いやったのか。

いずれにせよ、この暗殺を北に押し付けたい別の組織の犯行ではなのか????

そもそも、なぜ、実行犯である彼女らはホテルに直行したのか。

本当にドッキリの場合、仕掛けた人がドッキリでーす、と看板でも持ってテレビの前に現れるのが普通であろうが、彼女らはすぐにホテルに向かった。何か特殊な、催眠を受けていたのではないか。

いや、注目すべきはそこではない。

神経毒クリームを素手で触らせているんだ。恐らく、現時点で彼女らが生き残っている事自体が誤算ではないのか?そうだ、多分誤算だ。
一時殺害されたという報道が出た。殺害されていたら「本当にひどいやっちゃ」という事になりやすい。
実行犯を消すために、あえてVXガスクリームを使ったんだな。。。

それと気になるのは、すぐに出回った誤報だ。実行犯は殺害された。。。この誤報をタレ込んだヤツは誰なのか、一体この報道は何だったんだ。。。と勘繰りたくなる。 

さらに、北の出身者が映像で簡単に割れてしまうという、稚拙とも思われる犯行だが、見方を変えて、逆にそうなるように、北と違う組織が、脱北した北出身者に金を与えて、あえて実行組織に加えたのではないか???

そして、実行組織のメンバーは、彼をマサオだとは知らなかったんじゃないのか?

断っておくが、魚屋の店長は、生粋の日本人であり、北を支持する共産主義者ではない。

が、今回の出来事は、やはり不自然すぎるのである。北の組織の犯行と見せかけるための、別の組織の罠なのではないか。。。そう考えた方が、つじつまがあうのではないか?

そしてその組織とは、これから北に何かを起こそうとしている組織。もし、そういうシナリオが決まっているとしたら、武器し・・・

「ん?」

折れた煙草の灰が風で散っているのを見て、ふっと我に返り、服についた灰を払う、魚屋の店長。

そうだった。おれは魚屋の店長だった。今日もタイやヒラメをバンコクマダムに販売するのが、おれに与えられた仕事だ。マサオの冥福を祈り、これが国家の戦争の導火線にならない事を心底祈り、空想は止めにしよう。

店長は気分を切り替えて、店に入ると、マダムが「今日は手巻き寿司にするの。刺身のカットおねがいね!」と早速の注文だ。

東南アジアを照らす、まばゆい夕日は、何事もなかったかのように、バンコクの店舗を照らし続ける。

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